ストロンググリップまわり道
Sep. 05 '02

 ゴルフを始めて1年くらいしたころ、ゴルフの大先輩(ハンディキャップは12と記憶)から次のような質問を受けたことがあります。 "ゴルフで最も大事なポイントはなんだと思うか"と。それに対し、まだゴルフスイングの何たるかも理解していなかった私はただただ首をかしげるばかりで返 答に窮していました。しばらくしてその先輩は、それは"グリップ"なんだよ、と 私の顔を覗き込むようにして教えてくれたのです、今から30年近く前の話です。そのグリップの話をこれからしたい と思います。ゴルフを始めたときの私のグリップは今でいうストロンググリップ(というより自己流のグリップ  )でした。1年くらいして、かの先輩からグリップの大切さを聞かされても自己流のグリップは変わらず、ストロンググリップのままでスイングしていました。そして、スコアーの変遷はゴルフを始めて半年(確か5回目)で50を切り、その後すぐに100が切れるという人も羨む(?)順調な成長ぶりで多少の自慢でもありました。その後、3年ほどしてメンバーコースに入会し最初に頂いたハンディキャップが望外の12というものでした。クラブではシングルさんとのプレーが多く、その技術の高さにいつも驚かされ羨望の眼で見つめていたものです。そしてある競技会の時、同伴者のシングルさんからくだんのグリップについて次のように指摘されました。 "栗原さんはじきにシングルになれると思いますが、そろそろ今のグリップをやめてプロやアマチュア上級者が採用しているスクエアーグリップにすべきですよ" と・・私はハッとしてそのシングルさんの言葉に耳を傾け、神のお告げに聞き入っていました。当時は練習の虫で、一日に3ヶ所の練習場をはしごするという離れ業も演じております。そうだ! プロの殆どがスクエアーグリップだしシングルさんだって同じグリップでスイングしているではないか。このグリップに変えなければ上達はありえない!! そんなささやきに、今まで慣れ親しんだストロンググリップをいさぎよく捨て、このスクエアーグリップにシングルへの道を託したのです。善は急げ!今まで以上の練習を積み重ねて風雪2年、私のような月一サラリーマンゴルファーがシングルプレーヤーになれる訳がないと諦めかけていた矢先、 "貴方のハンディキャップを9に改正します"という通知書が届きました。念願のシングル入りです。 無上の喜びとともに、シングルになれたのもこのスクエアーグリップのお陰と神棚にでも捧げたい心境でした。以来、このゴルフクラブに10年少し在籍し、ハンディキャップも6にまで下がりました。とはいえ、この頃のハンディキャップは今のJGAハンディキャップ(実力で上下する)と違って下がりっぱなしの上げ底ハンディキャップだったような気がします。そして時もたち、今から10年前になる平成4年、50歳にして新たなゴルフクラブに入会することになりました。 練習ラウンドを重ねるうち、このコースは距離もタップリで私の飛距離では通用しないことを悟り、さらなる練習を積み重ねることになりました。ところが、練習中に左手首の関節や甲が痛みだしグリグリした軟骨まで出てくる始末、 痛くて練習どころではなくなりゴルフもこれでお終いかと肩を落としたものでした。そんな時、ある雑誌のPaul Azingerのビッグマッスル(大きな筋肉)を使うボディターン打法に目が奪われました。そして、ストロンググリップ(フックグリップ) 主流の米ツアーにあってさらに超がつくストロンググリップのスイング理論を知り、大げさに言えば目から鱗が落ちるような思いで読み返していました。そうだ、小さく動く腕や手首を主体にしないこのグリップとスイング理論を実践していけば、痛めている左手首や甲に負担がかからず、さらに、スイングそのものも良くなるに違いないと思ったのです。ところが、いざ練習再開!したものの思うようにボールが飛んでくれません。それは当たり前のことでした。今までのスクエアーグリップ(今ではこれをウイークグリップといっているようです)のスイングではボールがみな左に引っかかりダグフック気味に飛んでしまうのです。スイングの基本を変える必要がありました。例えば、頭を残す、左サイドの壁、リストターンといったスイングイメージからヘッドアップや左サイドの壁など無視してクラブを思いきってボディターンで振り抜く、これが大切なポイントだったのです。練習開始から1年余り、ようやくストロンググリップが身体になじみスイングもかたまってきました。スコアー的にも満足する成績が収められるようになり、自信めいたものも出てきたのです。が、この1年間というもの悪戦苦闘の連続で今思い返しても忸怩たるラウンドの連続でした。それは競技会などで、スコアーのあまりのひどさにラウンド後半からグリップを元に戻したり、また考え直してストロンググリップにしたりの繰り返しでスコアーも90回前後、ひどい時には100回近くもたたく始末でした。ハンディキャップ6(入会当時)にしてこのひどいスコアー、同伴者もあきれていたに違いありません。一目散にクラブハウスを後にしたのもこの頃です。まあこんな苦労話は前座として、私がストロンググリップでスイングするようにしてから飛距離も安定度も格段に向上し強いショットが打てるようになりました。以前の右にフケル弱いボールは姿を消し、平均ストロークも上がってきたのです。なにしろそれまでのベストラウンドが75、6回でしたから、現在のベストラウンド70回(ハンディキャップは瞬間的には4まで) そして、ベストハーフ34回を何回か出せるようになったのもこのグリップに変えたお陰、神様仏様ストロンググリップ様と感謝しているのです。そしてもし、スクエアーグリップ時代の失われた10数年が無かったなら・・とストロンググリップのトップ信奉者を自認する私としては戻れない時間にいささかの無念を感じるのです。 話を大きく広げて、日本のプロゴルファーの多くは今でもスクエアーグリップが主流で、このストロンググリップはまだまだ少ないようです。欧米から10年ないし20年遅れているといわれる日本のゴルフスイング(理論)はこのグリップの違いにあるような気がします。でも、丸山選手や佐藤選手、谷口選手、今野選手など現在の中心選手は今風のストロンググリップから素晴らしいゴルフを展開していますし、若手選手の中の多くも欧米選手のスタイルに近づいているようなのでこれからの日本選手にも大いに期待が持てそうです。ちなみに、私が一緒にプレーしているアマチュアゴルファーの多くもスクエアーグリップのゴルフスイングです。スクエアーグリップ(アップライトスイング)全盛時代に学びそれを鑑としてきた方々にとっては仕方ないことかも知れませんし、なんといっても出来上がったスイングを変えるには相当のリスクがあります。でも、そうしたリスクを考えてもなおストロンググリップのスイング理論を参考にし実践していたなら、きっと今以上のレベルアップがあったに違いないと、私のささやかな経験から感じるのです。 先人曰く、「ゴルフはグリップに始まりグリップに終わる」とその大切さを説かれていますが、まさに私の下手なゴルフもそのグリップで悩んできました。もちろん、これが絶対というものはないかも知れませんが、スキーのジャンプ競技で見るように革命的なV字飛行を全員が採用している現状を見ても、最新の理論を学び実践することが飛躍への早道になることは間違いないと思います。とはいえゴルフとはスイング理論だけでは片付けられない多くのファクターが魔物のように存在し、それによってスコアメイクも大きく左右されます。パッティングという難物、メンタル面での試練、コースマネージメントといった思考の世界、どれをとっても深みのある人間力を試されるようなテーマばかりです。パッティングが不得意で精神面も軟弱な私にとって、グリップやスイングだけではなくこれらのことも一つひとつ勉強し肝に銘じながらゴルフという摩訶不思議なスポーツに挑戦していきたいと思っています。そして、なによりも大切な尊敬されるゴルファーになることを心に誓いつつ・・でも、こればかりは未だ道遠く、多くのゴルフ仲間に失礼の極みをいたしているところです、ご勘弁あれ・・・。

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